はじめに
「業務を改善したいのに、上司に相談しても『忙しいから今は無理』と言われる」
「アイデアはあるのに、なぜか提案が通らない」
経理の現場で働いていると、こうした悩みにぶつかる方は多いのではないでしょうか。僕自身も、製造業・小売業・病院と、複数の現場で経理を経験してきましたが、どの職場でも最初からスムーズに提案が通ったわけではありませんでした。
実は、提案が通らない原因は、アイデアの質そのものではないことがほとんどです。原因は、伝え方と設計にあります。
この記事では、経理担当者が上司や関係部署を動かすための提案書の作り方を、実務目線で解説します。読み終える頃には、小さな改善提案を一つ、形にし始められる状態になっているはずです。
1. 経理の業務改善提案が通らない3つの理由
まず、なぜ提案が通りにくいのか。よくある3つの理由を見ていきます。
理由①:現場の困りごとだけを伝えている
「請求書確認に時間がかかって大変です」と伝えても、上司からすると「それで、会社にとって何が困るのか」が見えません。現場の負担感だけでは、判断材料になりにくいのです。
理由②:改善案が大きすぎる
「経費精算のフローを全部見直したい」といった大掛かりな提案は、上司にとって判断しづらいものです。関係部署への影響が読めず、結局「検討します」で止まってしまいます。
理由③:効果が数字で示されていない
他部署からの資料回収に毎月時間を取られていても、「どれくらいの時間が、どれだけ減るのか」が数字で示されていなければ、優先順位は上がりません。上司は、限られたリソースをどこに割くか、常に比較しながら判断しているからです。
2. 上司に通る提案書の基本構成
提案書は、次の5つの項目で組み立てると、上司が判断しやすくなります。
- 現状:何に、どれだけ時間がかかっているか
- 課題:なぜ遅れているのか
- 提案:何を変えるのか
- 効果:何時間減るのか、何が改善するのか
- 最初の一歩:まず何を試すのか
たとえば、他部署からの資料回収が遅れがちな場合、見出しはこのようになります。
「月次資料の提出遅延を、期限・フォーマット・リマインドの見直しで改善する提案」
抽象的な「業務効率化」ではなく、具体的な業務名を見出しに入れることで、上司は何についての話か、一目で把握できます。
3. 月次短縮を評価につなげる3つの伝え方
同じ改善内容でも、伝え方次第で評価につながるかどうかが変わります。ここでは3つのポイントを紹介します。
①「大変です」ではなく、数字で伝える
「資料回収に毎月〇時間かかっている」「そのうち催促作業だけで〇時間」というように、感覚ではなく数字を先に置きます。数字があると、上司は他の業務との比較がしやすくなります。
②「全部変えたい」ではなく、小さな実験として伝える
「まずは1部署だけ、来月から期限を3営業日前倒しして試してみたい」といった、範囲を絞った提案は、上司も了承しやすくなります。小さく始めて、結果を見てから広げるという順番です。
③「自分の仕事を減らしたい」ではなく、会社にとっての効果として伝える
「僕の残業が減ります」よりも、「決算の確定が早まり、経営判断に使える数字が早く出せます」という伝え方のほうが、会社全体にとっての意味が伝わります。
僕自身、年商100億円規模の会社で、経理2名という体制の中、月次の締めを10営業日から5営業日に短縮できた経験があります。特別なシステムを導入したわけではなく、業務を分解してボトルネックを特定し、関係部署とのやり取りを見直しただけです。
ここで大切なのは、実績を大きく見せようとしないことです。実際に記録した数字をそのまま提示するほうが、社内でも社外でも信頼につながります。

4. AI活用の提案を通すときの注意点
最近は、AIを使った業務改善の提案も増えてきました。ただし、AI導入を提案する際は、いくつか注意点があります。
- AI導入そのものを目的にしない:あくまで「何を改善するか」が先で、AIは手段の一つです
- どの作業を、どこまで任せ、誰が確認するかを先に決める:AIに任せる範囲と、人がチェックする範囲を明確にしておきます
- 機密情報・個人情報の取り扱いに注意する:社外ツールに入力してよい情報かどうかは、事前に確認が必要です
- 会計判断の最終責任は、あくまで人が持つ:数値の確定や税務・会計上の判断をAIに委ねることはできません
まずは、定型メールの下書き、資料のたたき台作成、マニュアル整理など、リスクの低い領域から始めるのが現実的です。

5. 明日から使える、提案書のたたき台
最後に、そのままコピーして使える簡易テンプレートを紹介します。「他部署への月次資料提出依頼」を例にしています。
件名:月次資料提出プロセスの見直しについて(ご相談)
現状
毎月、他部署からの資料回収に平均〇時間かかっており、うち催促対応が〇時間を占めています。
課題
提出期限とフォーマットが部署ごとにばらついており、確認と催促のやり取りが増えています。
提案
提出期限を月初〇営業日に統一し、フォーマットをテンプレート化。前日にリマインドを自動送信します。
効果
資料回収にかかる時間を、月あたり〇時間程度削減できる見込みです。
最初の一歩
まずは1部署に限定し、来月から試験的に運用します。
このテンプレートは、あくまでたたき台です。実際には、部署の状況や社内の慣習に合わせて調整が必要になります。より詳細なテンプレート集や、30日間かけて改善を進める手順については、後述する有料noteで扱っています。
まとめ・有料noteへの導線
ここまでの内容を、簡単に振り返ります。
- 提案が通らない原因は、アイデアの質より伝え方にあること
- 「現状・課題・提案・効果・最初の一歩」の5項目で構成すること
- 数字・小さな実験・会社への効果として伝えること
- AI活用は、範囲とリスクを先に決めてから始めること
「改善案を思いつくこと」と「社内で実際に進め、実績として残すこと」は、似ているようで別の力です。前者はアイデア力ですが、後者は、伝え方・巻き込み方・記録の仕方といった、いわば「仕組みを設計する力」です。
有料note「経理担当者のためのAI業務改善30日ロードマップ」では、業務の棚卸しの仕方から、改善テーマの選び方、AIの具体的な活用方法、そして上司への見せ方まで、30日間の手順として解説しています。今回の提案書づくりを、さらに一歩進めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。



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