経理の業務改善が進まない会社に共通する5つの理由|月次が遅い原因は「人手不足」だけではない

煩雑な月次業務を整理し、経理改善を進めるイラスト 未分類

はじめに

「今月も月次が遅れた」「来月こそは早く締めよう」

そう思いながら、気づけば毎月同じ時期に残業をしている。そんな経験はないでしょうか。

僕自身、経理として12年ほど実務に携わってきました。製造業、小売業、病院と、業種の異なる現場を経験する中で、月次決算の遅れに悩む会社にはある共通点があることに気づきました。

それは、「人手が足りないから」という理由だけで片付けられがちだということです。

もちろん人手不足は実際の課題です。ですが、人を増やせば月次が早くなるかというと、必ずしもそうとは限りません。仕組みそのものに遅れの原因が潜んでいるケースは、決して少なくないからです。

今回は、経理の業務改善が進まない会社に共通する5つの理由を整理しながら、どこから見直せばよいのかを一緒に考えていきたいと思います。

1. 業務全体が見える化されていない

月次決算が遅れる会社の多くは、「誰が」「いつ」「何をしているか」が一覧化されていません。

担当者それぞれが自分の作業を頭の中で把握しているだけで、業務全体を俯瞰できる資料が存在しない状態です。この状態では、遅れの原因を聞かれても「なんとなく忙しかったから」という感覚的な答えしか出てきません。

まず取り組みたいのは、月次業務を工程ごとに分解し、それぞれにかかる所要時間を書き出すことです。仕訳入力、証憑の確認、他部署からの資料回収、経費精算のチェックなど、細かく分けていくと、思っていた以上に工程数が多いことに気づくはずです。

この一覧化ができて初めて、「どこにどれだけ時間がかかっているか」を客観的に見られるようになります。感覚ではなく事実として業務を捉えることが、改善の出発点になります。

2. 本当のボトルネックを特定していない

業務を洗い出しても、そこで終わってしまう会社も少なくありません。多くの現場では「仕訳入力に時間がかかっている」と思われがちですが、実際に工程を分解してみると、原因はまったく別のところにあるケースがよくあります。

たとえば、営業部門からの資料提出が遅れている、提出されたデータの形式がバラバラで確認に時間がかかっている、差し戻しと再提出のやり取りだけで数日が過ぎている、といった具合です。

ここで大切なのは、「最も時間がかかっている工程」を探すことではなく、「全体を止めている工程」を探すことです。ある一つの工程が終わらない限り、後続のすべての作業が着手できない、というポイントが必ずどこかにあります。そこを特定できるかどうかで、改善の効果は大きく変わってきます。

月次業務の流れから資料回収のボトルネックを探すイラスト

3. 関係部署との期限・ルールが曖昧

月次決算は、経理だけで完結する業務ではありません。営業、購買、現場など、社内のさまざまな部署からの情報があって初めて成り立ちます。

この関係部署とのやり取りに、明確な期限やルールが存在しないと、毎月同じような確認作業や催促が発生します。「いつまでに提出してほしい」という締め切りが曖昧なまま運用されていたり、提出フォーマットが担当者ごとにバラバラだったりすると、経理側で毎回内容を整える手間が発生し、それが積み重なって遅れにつながっていきます。

これは経理担当者の努力だけでは解決しにくい部分です。だからこそ、期限とフォーマットをあらかじめ決めておき、社内でルールとして共有しておくことが、地味に見えて効果の大きい改善になります。

4. 属人化しており、標準化されていない

「この作業は〇〇さんしか分からない」という状態も、月次の遅れを生む大きな要因です。

口頭でしか伝わっていない例外対応、マニュアル化されていないチェック業務、特定の担当者の経験と勘に頼っている工程があると、その人が休んだり異動したりするだけで、業務全体が滞ってしまいます。

とはいえ、いきなり完璧なマニュアルを作る必要はありません。まずはチェックリストの形で、作業の手順や確認ポイントを書き出すところから始めれば十分です。誰が見ても同じように作業できる状態に少しずつ近づけていくことが、属人化の解消につながります。

5. 改善効果を記録していない

せっかく業務改善に取り組んでも、その効果を記録していない会社は意外と多いです。

改善前と改善後で、締め日がどれだけ早まったのか、確認作業の件数がどれだけ減ったのか、ミスの発生がどう変化したのか。こうした数字を残しておかないと、改善の成果が見えないまま終わってしまい、次の改善へのモチベーションにもつながりません。

小さな改善であっても、「改善前・改善後」を数字で比較できる形にしておくことをおすすめします。数字として残しておくことで、社内での評価にもつながりやすくなります。

6. 明日から始める月次改善の3ステップ

ここまで5つの理由を見てきましたが、明日からできることとして、次の3ステップに絞って整理しておきます。

  1. 月次業務を一覧にし、それぞれの所要時間を書き出す
  2. 一番時間がかかっている工程ではなく、全体を止めている工程を一つ選ぶ
  3. 改善前後の時間・締め日・ミスの件数を記録する

まずはこの3つだけで構いません。すべてを一気に変えようとする必要はなく、一つずつ着実に進めることが、結果的に近道になります。

最初は30分だけ時間を取り、直近の月次で行った作業を思い出しながら書き出してみてください。完璧な一覧ではなくても、改善の入口になります。

まとめ

月次決算が遅れると、つい「人が足りないから仕方ない」と考えてしまいがちです。ですが、業務が見える化されていない、ボトルネックが特定されていない、関係部署とのルールが曖昧、属人化している、改善効果を記録していない。こうした仕組みの問題が、遅れの背景に隠れていることは少なくありません。

大切なのは、遅れの原因を個人の頑張りに求めるのではなく、仕組みとして捉え直すことです。まずは業務を分解し、全体を止めているポイントを見つけることから始めてみてください。

僕自身、年商100億円規模、経理2名体制という決して余裕のある環境ではない中で、月次決算を10営業日から5営業日へ短縮した経験があります。特別なシステムを導入したわけではなく、業務の分解、ボトルネックの特定、関係部署とのやり取りの見直しを地道に積み重ねた結果です。

その具体的な進め方については、有料noteの記事「月次を10営業日→5営業日にした設計図|年商100億・経理2名体制で実践した改善ロードマップ」で、どの業務をどう分解したか、どこを優先的に見直したか、関係部署とのやり取りをどう設計したかを、実際に取り組んだ順番に沿って解説しています。

「まず何から手を付ければいいか分からない」という方は、あわせて読んでみてください。

月次を10営業日→5営業日にした設計図〜年商100億・経理2名体制で実践した改善ロードマップ〜|ケンドーマメ
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