はじめに
毎月同じように忙しいのに、いざ「何にそんなに時間がかかっているんですか」と聞かれると、うまく答えられない。そんな感覚を抱えている経理担当者は、少なくないと思います。
僕自身、製造業・小売・病院と経理の現場を渡り歩いてきましたが、どの職場でも最初にぶつかったのは「忙しさの正体が分からない」という壁でした。忙しいことは分かっているのに、何が原因で、どこを直せば楽になるのかが、自分でも説明できない。そんな状態です。
忙しさを解消しようとするとき、多くの人はまず「便利なツールはないか」「もっと効率的なやり方はないか」と、外側に答えを探しにいきます。ですが、僕の経験上、最初にやるべきことはツール探しではありません。まずは、今の業務がどうなっているのかを、数字で記録することです。
記録がなければ、何を改善すればいいのかも、改善した結果どれだけ変わったのかも、誰にも説明できません。この記事では、経理業務の「忙しい」という感覚を、具体的な改善テーマに変えるために、最初に記録しておきたい3つの数字を紹介します。
最初に記録すべき3つの数字

① 業務ごとの所要時間
まずは、月次業務を大まかに分けて、それぞれにどれくらいの時間がかかっているかを書き出してみましょう。
たとえば、請求書の確認、仕訳の入力、残高の照合、資料の作成、他部署への確認連絡といった単位です。最初から正確に計測する必要はありません。「請求書確認に半日くらい」「残高照合に1日くらい」といった、ざっくりとした感覚で構いません。
大事なのは、感覚だけで「忙しい」と言うのではなく、業務を分解し、それぞれに時間という数字を当てはめてみることです。これだけで、自分がどこに時間を使っているのか、忙しさの中身が少しずつ見えてきます。
② 作業のやり直し・確認待ちの回数
忙しさの原因は、単純な作業量の多さだけとは限りません。
差し戻しや確認待ち、資料不足による中断、修正依頼への対応など、いわゆる「手戻り」がどれくらいの頻度で発生しているかも、記録しておきたい数字です。
この手戻りの回数を数えてみると、「経理の処理が遅い」のではなく、前工程や確認フローの側に原因があるケースが見えてくることがあります。たとえば、他部署からの資料提出が遅れがちで、そのたびに催促や差し戻しが発生している、といった具合です。原因が自分の作業スピードではなく、業務の流れそのものにある場合、改善すべき場所も変わってきます。
③ 月次締めの各工程が終わる日
月次締めを「ひとつの大きな作業」として捉えていると、どこに時間がかかっているのかが見えにくくなります。
請求書確認はいつ終わったか、仕訳入力はいつ終わったか、残高照合はいつ終わったか。工程ごとに完了日を記録していくと、どの工程が想定より長引いているか、つまりボトルネックがどこにあるかが見えてきます。
「なんとなく月次が長い」ではなく、「◯◯工程が毎回遅れている」と言えるようになると、改善の焦点が定まります。これは、忙しさを漠然とした感覚から、具体的な検討材料に変える作業でもあります。
記録を改善につなげる3ステップ
数字を記録するだけで満足せず、次の3ステップで改善につなげていきましょう。
- まずは1週間だけ、3つの数字を記録する
- 最も時間がかかる業務、または手戻りの多い業務を1つ選ぶ
- 改善前後の数字を残し、変化を確認する
一度にすべてを改善しようとする必要はありません。範囲を広げすぎると、記録も改善も続かなくなってしまいます。最も影響の大きい1つに絞ることで、労力をかけずに変化を実感しやすくなります。
上司への伝え方

数字の記録は、自分の業務改善だけでなく、上司や他部署への説明材料にもなります。たとえば、次のような伝え方が考えられます。
「月次作業を記録したところ、〇〇に時間がかかり、△△の確認待ちが発生していることが分かりました。まずはこの部分だけ改善できないか、進め方を見直したいと考えています。」
感覚ではなく数字をもとに話すことで、上司も状況を理解しやすくなります。「忙しいので何とかしてほしい」という相談より、「ここに時間がかかっているので見直したい」という相談のほうが、話は前に進みやすいものです。
まとめ
「忙しい」は、そのままでは改善できない言葉です。ですが、業務を分解し、数字で記録すれば、具体的な改善テーマに変えることができます。
完璧な業務分析をする必要はありません。まずは、業務ごとの所要時間、手戻りの回数、工程ごとの完了日という、小さな記録から始めてみてください。
数字で変化を残すことは、日々の業務改善だけでなく、自分自身の実績やキャリアの強みとして積み上げていくことにもつながっていきます。

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