はじめに
「このままではまずい」「もっと効率化できるはずだ」
——そう思いながらも、日々の月次決算や請求書処理に追われて、改善案を考える余裕すらない。そんな経理担当者の方は多いのではないでしょうか。
僕自身、経理歴12年の中で、製造業・小売・病院と業種の異なる現場を経験してきました。
どの現場にも共通していたのは、「改善したい気持ちはあるのに、それをどう上司に伝えればいいか分からない」という悩みです。
思いつきで「業務を見直しましょう」と提案しても、上司の反応は鈍いままです。
それは、あなたの提案が悪いのではなく、伝え方が整理されていないだけかもしれません。この記事では、経理業務の改善提案が上司に通るための考え方と、基本の型についてお伝えします。
経理の業務改善提案が通りにくい3つの理由
まず、なぜ経理の改善提案は通りにくいのか、代表的な理由を3つ整理します。
①「忙しいから改善したい」だけでは、経営への影響が伝わらない
「毎日残業が続いていて大変です」という訴えは、担当者にとっては切実でも、上司からすると個人の負担の話に見えてしまいがちです。それが会社にとってどんな損失につながっているのかまで示さないと、優先度の高い課題として認識されません。
②改善後の姿が曖昧で、上司が判断できない
「もっと効率化したい」という言葉だけでは、上司は何を承認すればいいのか分かりません。具体的に何がどう変わるのかが見えなければ、判断のしようがないのです。
③いきなり大きな改革を提案してしまう
「システムを入れ替えたい」「業務フローを全部見直したい」といった大きな提案は、投資判断が必要になり、承認のハードルが一気に上がります。小さく始められる提案の方が、実は通りやすいのです。
上司に通る提案書の基本構成
改善提案を通すために意識したいのが、「現状」「課題」「提案」という3つの要素です。経費精算・請求書処理・月次締めといった経理業務を例に見ていきます。
現状:どの作業に、どれだけ時間がかかっているか
たとえば「請求書の起票に、月あたり合計で何時間かかっているか」「月次締めの中で、どの工程が一番時間を取っているか」を具体的に示します。感覚ではなく、実際にかかっている時間を可視化することが出発点です。
課題:なぜ遅れるのか、どんなリスクや損失があるのか
時間がかかっている原因を掘り下げます。「関係部署からの資料提出が遅い」「確認のやり取りが何往復も発生している」など、遅延の構造を具体的に言葉にします。あわせて、それが放置された場合にどんなリスク(締め日の後ろ倒し、担当者の疲弊、ミスの発生など)につながるかも添えます。
提案:何を変え、どんな効果が見込めるのか
最後に、何を変えるのかと、どんな効果を目指すのかを提示します。
大きなシステム投資である必要はありません。たとえば「提出期限を前倒しし、依頼メールを定型化することで、確認の往復を減らし、月次締めの遅れを防ぐ」といった小さな提案でも十分です。僕自身、月次締めを10営業日から5営業日に短縮した際も、新しいシステムを導入したわけではありませんでした。
月次業務を工程ごとに分解し、どこで遅延が発生しているかを特定した上で、関係部署とのやり取りの仕方そのものを見直したことが、改善の中心でした。

月次短縮を「評価される実績」に変える伝え方
改善提案は、実行して終わりではありません。それを「実績」として言語化できるかどうかで、あなた自身の評価にもつながります。
そのために重要なのが、改善前後の変化を記録しておくことです。
- 締め日が何営業日から何営業日に変わったか
- 確認のやり取りの回数がどう減ったか
- ミスや差し戻しの件数がどう変化したか
これらを記録しておくと、「月次決算を担当していました」という説明から一歩進んで、「業務を分解し、関係部署との依頼フローを再設計することで、月次締めを短縮しました」というように、自分が何をして何が変わったのかを具体的に語れるようになります。この違いは、社内評価だけでなく、将来的なキャリアの説明にも活きてきます。

明日からできる、小さな提案の作り方
大きな提案を一から作ろうとすると、腰が重くなってしまいます。まずは次の3ステップから始めてみてください。
- 最も時間がかかっている業務を1つ選ぶ
完璧な優先順位づけは不要です。「一番手間だと感じている作業」で構いません。 - 現状の時間と、遅れる理由を記録する
1週間程度でよいので、その作業にかかる時間と、待ち時間が発生している箇所をメモします。 - 改善後にどうなれば成功かを、一文で書く
「〇〇の確認にかかる時間を半分にする」など、判断できる基準を一つ決めます。
この3ステップだけでも、「なんとなく改善したい」から「上司に説明できる提案」へと、大きく近づきます。
まとめ
経理の改善提案が通らないのは、能力の問題ではなく、伝え方が整理されていないことがほとんどです。「現状」「課題」「提案」の3つを押さえ、改善の成果を数字と言葉で記録していくこと。それだけで、小さな改善でも上司を動かす提案書になります。
この記事では、提案の考え方と基本構成までをお伝えしました。とはいえ、実際に提案書を一から作るのは、フォーマットを考えるだけでも時間がかかるものです。
「ゼロから提案書を作る負担を減らしたい」という方に向けて、有料note「経理担当者のための『業務改善提案書』実践テンプレ|上司を動かし、月次短縮を実績に変える方法」では、そのまま使える提案書のテンプレートや、上司へ説明する際の文章例、Claudeを使って提案書のたたき台を作るプロンプトをまとめています。
提案書作りの一歩を、もう少し楽にしたい方は、有料note「経理担当者のための『業務改善提案書』実践テンプレ」もあわせてご覧ください。 https://note.com/kendomame/n/n7f0409e3c87f

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