こんにちは!ケンドーマメです。
この記事でも触れた通り、僕は当初個人再生をしようと考えていました。
そこで知ったのですが、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という2つの手続きがあり、それぞれ特徴が異なります。
裁判所のデータによると、令和3年度の個人再生申立件数は約23,000件で、そのうち約70%が給与所得者等再生でした。本記事では、債務整理の現場で多くの相談に応じてきた経験を基に、それぞれの手続きの違いや詳細なメリット・デメリットを解説します。
参考:裁判所 司法統計
個人再生制度の基礎知識
個人再生とは、民事再生法に基づく法的債務整理手続きで、裁判所を通じて債務を減らし、残りを原則3年以内(最長5年まで可能)に分割返済する制度です。民事再生法第221条以下に規定されています。
令和元年の最高裁判所司法統計によると、個人再生の申立件数は年間約25,000件で、その認可率は約90%と高い水準を維持しています。これは自己破産と異なり、一定の財産(自宅など)を手元に残しながら債務整理ができる点が評価されているためです。
個人再生のポイント
- 債務減額の目安: 債務総額の最大で約80%まで減額可能
- 対象債権: 消費者金融、クレジットカード、銀行ローンなどの無担保債権
- 手続き期間: 申立てから認可まで約4~6ヶ月
- 返済期間: 原則3年間(最長5年まで延長可能)
小規模個人再生と給与所得者等再生の法的根拠と違い
法的根拠
- 小規模個人再生: 民事再生法第239条~第248条に規定
- 給与所得者等再生: 民事再生法第239条の2~第239条の3に規定
基本的な違い
小規模個人再生と給与所得者等再生の最も本質的な違いは「債権者の決議の要否」です。
小規模個人再生では債権者の決議が必要である一方、給与所得者等再生では債権者の同意なく裁判所が認可できる点が大きく異なります。
東京地方裁判所の統計によれば、給与所得者等再生の認可率は約92%であるのに対し、小規模個人再生の認可率は約85%と若干低くなっています。これは債権者の同意を得る必要があることが影響していると考えられます。
あくまで個人の経験談ですが、個人の借金レベルであれば、債権者が誰も出席しないこともあります。
僕が自己破産手続きをした弁護士も言っていました。
適用条件の詳細比較
小規模個人再生の適用条件
- 債務総額が5,000万円以下であること(民事再生法第221条1項)
- 将来において継続的に収入を得る見込みがあること
- 職業や収入源に制限なし(フリーランス、個人事業主、無職でも申立可能)
給与所得者等再生の適用条件
- 債務総額が5,000万円以下であること(民事再生法第221条1項)
- 継続的・安定的な収入があること(民事再生法第239条の2第1項)
- 以下のいずれかに該当すること:
- 給与等(賞与を含む)を定期的に受ける者
- 年金を定期的に受ける者
- これらに準ずる定期的な収入を将来継続的に得る見込みがある者
重要なのは「安定収入」の判断基準です。裁判実務では、一般的に以下の条件を満たす場合に「安定収入」と認められています:
- 最低でも再生計画の履行期間(原則3年間)は継続する見込みがあること
- 月々の収入額の変動が小さいこと
- 過去1年程度の収入実績があること
適用条件の具体例
職業・状況 | 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 |
正社員 | 〇 | 〇 |
3年以上契約の契約社員 | 〇 | 〇 |
パート・アルバイト(長期契約) | 〇 | △(安定性が認められれば) |
自営業(安定収入) | 〇 | △(安定性が認められれば) |
自営業(収入変動大) | 〇 | × |
年金受給者 | 〇 | 〇 |
無職 | 〇 | × |
フリーランス | 〇 | △(安定性が認められれば) |
手続きの流れと期間の違い

小規模個人再生の手続きの流れ
- 準備段階(1~2ヶ月)
- 弁護士・司法書士への相談
- 債権者一覧表の作成
- 財産目録の作成
- 収支計画の作成
- 申立て(裁判所に必要書類を提出)
- 再生手続開始申立書
- 債権者一覧表
- 財産目録
- 収支計画書
- 陳述書
- 住民票
- 課税証明書 など
- 開始決定(申立てから約2週間)
- 債権者への通知
- 官報公告
- 債権届出期間の設定(約1ヶ月)
- 債権者集会(開始決定から約2~3ヶ月後)
- 再生計画案の説明
- 債権者からの質問
- 議決権行使(重要)
- 認可決定(債権者集会から約1ヶ月後)
- 債権者の過半数の同意と債権総額の過半数の同意が必要
- 計画遂行(原則3年間の分割返済)
総期間: 申立てから認可まで約4~6ヶ月
給与所得者等再生の手続きの流れ
- 準備段階(1~2ヶ月)
- 小規模個人再生と同様
- 申立て(裁判所に必要書類を提出)
- 小規模個人再生と同様
- 加えて、安定収入を証明する書類(給与明細、源泉徴収票、雇用契約書など)
- 開始決定(申立てから約2週間)
- 債権者への通知
- 官報公告
- 債権届出期間の設定(約1ヶ月)
- 再生計画案の提出(開始決定から約2ヶ月後)
- 債権者集会は原則不要
- 認可決定(再生計画案提出から約1ヶ月後)
- 債権者の同意は不要
- 法定の要件を満たしていれば裁判所が認可
- 計画遂行(原則3年間の分割返済)
総期間: 申立てから認可まで約3~5ヶ月(小規模個人再生より若干短い)
僕は自己破産をしましたが、参考までに体験談を載せておきます。
おおまかな手続きの流れなどは同じはずです。
最低弁済額の計算方法
個人再生では、債権者に対して最低限支払わなければならない金額(最低弁済額)が定められています。
これは「清算価値保障原則」に基づくもので、債権者が自己破産手続きによって得られる配当よりも少なくない金額を保障するためのものです。
両手続きに共通する計算方法
最低弁済額は以下の2つのうち、大きい方の金額となります:
- 債務総額の20%(ただし、債務総額が100万円未満の場合は100万円、5,000万円を超える場合は1,000万円)
- 処分価値のある財産の総額(清算価値)
清算価値の計算例
典型的な財産の評価方法:
財産の種類 | 評価方法 |
預貯金 | 額面の100% |
現金 | 額面の100% |
自動車 | 市場価値の約70%~80% |
住宅等の不動産 | 市場価値の約70%~80% (住宅ローンを差し引いた金額) |
退職金請求権 | 自己都合退職の場合の約60~70% |
生命保険解約返戻金 | 解約返戻金の100% |
家財道具 | 99万円までは評価額0円 |
具体例: 債務総額が500万円、預貯金が30万円、自動車(市場価値50万円)、家財道具(一般的なもの)の場合
- 債務総額の20% = 500万円 × 20% = 100万円
- 清算価値 = 預貯金30万円 + 自動車35万円(50万円×70%) + 家財道具0円 = 65万円
この場合、最低弁済額は100万円となります。
各手続きの具体的なメリット・デメリット
小規模個人再生のメリット
- 幅広い適用対象: 収入が不安定な人でも利用可能
- 柔軟な返済計画: 収入の変動に応じた計画が立てやすい
- 自宅などの財産保持: 住宅資金特別条項を利用すれば住宅ローンを除外可能
- 自営業者に適している: 事業継続しながらの債務整理が可能
小規模個人再生の具体的なデメリット
- 債権者の同意取得が難しい場合がある: 特に一部債権者が強硬に反対する場合
- 手続きが複雑: 債権者集会の準備や出席が必要
- 費用が高い: 弁護士・司法書士費用は約50~70万円(着手金30~40万円、報酬金20~30万円)
- 手続期間が長い: 債権者集会の開催などにより約4~6ヶ月かかる
- 失敗した場合のリスク: 認可されない場合、自己破産を検討することになる
給与所得者等再生の具体的なメリット
- 債権者の同意不要: 債権者が反対しても法定要件を満たせば認可される
- 手続きがシンプル: 債権者集会が不要で負担が少ない
- 費用が比較的安い: 弁護士・司法書士費用は約40~60万円(着手金25~35万円、報酬金15~25万円)
- 手続期間が短い: 債権者集会がないため約3~5ヶ月で完了
- 認可率が高い: 安定収入があれば認可される可能性が高い
給与所得者等再生の具体的なデメリット
- 安定収入の証明が必要: 継続的な収入がないと利用できない
- 収入変動に弱い: 収入が大幅に減少した場合、計画変更手続きが必要
- 返済期間の制約: 原則3年以内の返済計画が求められる
- 再生計画の変更手続きが煩雑: 収入減少など状況変化時の対応が難しい
- 転職や退職のリスク: 手続き中の転職や退職で資格を失う可能性がある
住宅ローン特則の適用と条件

個人再生では「住宅資金特別条項」(住宅ローン特則)を利用することで、住宅ローンを個人再生手続きから除外し、住宅を手放すことなく債務整理を行うことができます。小規模個人再生、給与所得者等再生ともに適用可能です。
住宅ローン特則の適用条件
- 住宅ローンが住宅の購入資金であること
- 債務者が当該住宅に居住していること
- 住宅ローンに遅延がないこと(または債権者の同意があること)
- 住宅の価値がローン残債より低くないこと(担保割れしていないこと)
住宅ローン特則のメリット
- 住宅を手放すことなく債務整理ができる
- 住宅ローン以外の債務を大幅に減額できる
- 住宅ローンの返済条件は変わらず継続できる
住宅ローン特則の注意点
- 住宅ローンの返済は減額されない
- 担保割れしている場合は適用が難しい
- 住宅ローンに延滞がある場合は債権者の同意が必要
個人再生が認可されるための要件
小規模個人再生の認可要件
- 再生計画案が法令に適合していること
- 再生計画案が公正かつ衡平であること
- 再生計画案が遂行可能であること
- 債権者集会における可決
- 出席債権者の過半数の同意
- 議決権総額の過半数の同意
給与所得者等再生の認可要件
- 再生計画案が法令に適合していること
- 再生計画案が公正かつ衡平であること
- 再生計画案が遂行可能であること
- 安定した収入があること
- 債権者集会における可決は不要
個人再生後の生活への影響
信用情報への記録
個人再生を行うと、信用情報機関(JICC、CIC、全銀協)に債務整理の事実が記録されます。
- 記録期間: 再生手続開始決定から5~10年間
- 影響: クレジットカードの作成や各種ローンの利用が制限される
職業制限
個人再生中は、一部の資格・職業に就けない制限があります。主なものは:
- 弁護士、司法書士、行政書士、税理士などの一部士業
- 宅地建物取引士(宅建)
- 警備業者
ただし、個人再生完了後はこれらの制限は解除されます。
生活面での実体験(相談者からの声)
- 「住宅ローン以外の債務が大幅に減り、毎月の返済負担が軽くなった」(40代男性)
- 「個人再生後は現金中心の生活になったが、計画的な家計管理ができるようになった」(30代女性)
- 「再生計画完了後、約3年でクレジットカードを作ることができた」(50代男性)
よくある質問と回答
Q1: 個人再生中に収入が増えた場合、返済額は増えますか?
A: 基本的に再生計画で定められた金額以上の返済義務は発生しません。ただし、著しく収入が増加した場合(年収が2倍以上になった場合など)、債権者から計画変更の申立てがされる可能性があります。
Q2: 個人再生中に引っ越しや転職はできますか?
A: 引っ越しは可能ですが、裁判所や弁護士に住所変更の届出が必要です。転職については、給与所得者等再生の場合、安定収入の維持が条件となるため、収入が大幅に減少する転職は再生計画の変更が必要になる場合があります。
Q3: 個人再生後、いつからクレジットカードが作れますか?
A: 個人再生の情報は信用情報に5~10年間記録されます。実務上は再生計画完了後3~5年程度で作成できるケースが多いですが、カード会社の審査基準によります。
Q4: 個人再生中に病気や事故で収入が減った場合はどうなりますか?
A: 一時的な減収であれば、裁判所に分割返済の猶予を申し立てることができます。長期的な収入減少の場合は、再生計画の変更手続きを行うことになります。
Q5: 個人再生は自分でもできますか?それとも専門家に依頼すべきですか?
A: 個人再生は複雑な法的手続きであり、書類作成や裁判所とのやり取りなど専門知識が必要です。認可率を高めるためにも、弁護士や司法書士への依頼をお勧めします。実際に東京地方裁判所の統計では、専門家に依頼した場合の認可率は約90%、本人申立ての場合は約60%と差があります。
まとめ:あなたに合った個人再生方法の選び方
給与所得者等再生が向いている人
- 正社員や契約社員として安定した収入がある人
- 定期的な年金を受給している人
- 手続きをなるべく簡略化したい人
- 債権者の同意を得ることが難しいと予想される人
小規模個人再生が向いている人
- フリーランスや収入が変動する個人事業主
- 現在は安定収入がないが債務整理をしたい人
- 柔軟な返済計画を立てたい人
- 債権者との交渉に自信がある人
最終的な判断のポイント
個人再生は、自己破産とは異なり一定の財産を保持しながら債務の一部を免除してもらえる債務整理方法です。どちらの手続きが適しているかは、以下のポイントで判断しましょう:
- 収入の安定性: 安定収入があれば給与所得者等再生
- 手続きの簡便さ: シンプルな手続きを望むなら給与所得者等再生
- 返済計画の柔軟性: 柔軟な計画を望むなら小規模個人再生
- 住宅の有無: 住宅ローン特則を利用したい場合はどちらも可能
どちらの手続きを選択する場合も、専門家に相談して自分の状況に最適な方法を選ぶことをお勧めします。個人再生は新たな経済生活をスタートさせるための有効な手段となるでしょう。
※本記事は法的助言を目的としたものではありません。実際に個人再生を検討される場合は、弁護士や司法書士等の専門家にご相談ください。
※本記事の内容は民事再生法および最高裁判所の統計データに基づいています。法律改正により内容が変更される可能性がありますので、最新情報は専門家にご確認ください。
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